柳生流 形(勢法)の心得
一、余裕を持った動作(気位)
- 一手先を見込んでの動き
- 足先の開きが次の動作に移りやすい方向に開かれる事
- 足の動作によって腰・肩の動きが従って剣が振られる事
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全身の一個所に固さを感じさせず自然体
(自然体とは相手によって応ずる姿。勝つ気持ちを去って、負けない事を思う) - 左手は常に扇子の「要」的位置である事を忘れない事
- 左足(後の足)が止まった時が打った時、五体がそろい、特に手の内の締まる事
「五箇の身位を基本として右上記の心持ちが柳生流の形の姿である」
二、目付の事
- 打太刀は正しく、特に打つ個所個所に目をはずさないで使太刀を導く事
- 使太刀はあくまでも対者の顔に心と体を正対し、一瞬たりともはずさない事
「二星・嶺谷・遠山、三箇三見を基本として、相手との縁を切らない気持ちが重要」
三、技の心持ち
- 互いの太刀の打合った瞬間が、技の仕終った時で、その瞬間は相手の太刀・力を巻込む気持ちで攻めに入る
- 攻込んで、半身の位で相手の二の太刀を封じる姿勢の事
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相手の太刀の流れに従って切先三寸ではずし、相手の腕を上からのしかかる気持ち
(呼込んで打ち乗る)
「病気を去って、気・剣・体一致の無拍子打ちを根本とする」
四、攻撃の心持ち
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当流は、打って勝つにあらず。攻込んで勝ちを得る攻勝ちである。
しかし攻める入口は打突であって、打突はあくまで基本的動作(単なるきっかけに過ぎない)という事を忘れない -
吾攻めれば対者の心に動きが起こる。
相手が守備に心動けばその機を越して打ちに出るか、二段・三段と連続出来る攻撃に打って出る - 吾が攻撃の出鼻に相手が打って来れば、一瞬摺り上げる気持ちで身をぶつけに出るか、遅れを感じた時は身を開いて線をはずし、新しい打間を取って、相手の太刀を流して打つ
- 気持ちは常に攻撃に、身は守備を備えた攻撃である事(懸待有)
「活人剣の心持ちで攻めて、相手が動いた所を三拍子(当拍子・付拍子・越拍子)に取る」
「目標」
人生を楽しむ術(すべ)を知った剣客として、武道を楽しむ術を知った人との交歓を目標に励みたい
『交剣知愛』
「畑峯三郎師範 語録」
- 刀速とは剣の速さではなく、体勢を崩さずに体が動く速さである。
- 相手の剣を見る方法に三通りあり。進んで来るか、待っているか、退くか。これを観の目で見て、相手が我の右を打ってくれば応じて相手の右を打ち、相手が我の左を打ってくれば打ち落とす。
- 寒稽古と土用稽古を重ねる者ほど強者となる。
- 剣の使い方は、着物の糸の縫い目のように、表と裏を使うべし。
- 心にわだかまりや気張りがあっては姿勢が崩れる。座禅や、正座で手を合わせて黙想し、心を静めて、全身の力をスーッと抜いた時の気持ちや姿。それがそのまま形(勢法)や、構え(位)にならねばならない。